秋冬のオサレ

先日、雑談の際、クライアントから質問がありました。

どうしても自分はオサレにはなれない。どうしたらジェイさんみたいにオサレになれますか?ということで。

全然、なれます。

その人は、僕がよく着ているブランドは「むしろ苦手」なブランドで、そこのブランドの服を着ている女性を見ると水商売っぽく「下品」と感じていたそうです。高そうだけどオサレではない、と。それが僕が着ているのを見て初めて「素敵」と感じるようになったそうで。だから、買っている店や、ブランドじゃない、と思ったそうで。

具体的にどうすればオサレになるかというと、やっぱりオサレな人から学ぶことでしょうか。パリではカフェで座って外を眺めながら、人の観察をするのが好きです。その時に、色合わせやシルエットを研究したりします。SNSや雑誌などで研究するのもいいでしょう。見る、ということはすごく大事なんです。

オサレになろうと思うなら、思っているより、まず、実際に動くことです。でも洋服を買いに行くよりもまず、見る、研究するのです。素敵な人を見たら、なぜ素敵なのか?を具体的に言葉にして見ると、なぜ素敵に見えるかもわかります。

素敵に見えるポイントがいくつもわかってくると、それが自分の「財産」それらの基本を踏まえて今度は応用に入ります。自分の顔、体、雰囲気と相談して、合う合わないを絞って行く。

見て、研究してる間に「自分はこうゆうのが好き」というのが明らかにわかってくると思います。

その自分の好き、を大事にしてください。偏ります。偏るのです。それでいいのです。いろんなスタイルを着こなす必要など、モデルではありませんから、全く必要のないこと。毎日、同じ服、同じような服で全く問題ないのです。毎日違うコーディネイトじゃないと恥ずかしいなんて、昭和すぎる考えです。

僕にとっては洋服とはシルエットと生地感。それが最優先です。

でも、色にこだわる人もいるでしょう。動きやすさかもしれません。値段かもしれませんし、ブランドだと言う人もいるでしょう。

なんでもいいですが、似合うかどうか、ももちろん重要ですから、好きなものを好きに着ることは理想とはいえ、大人はある程度人の目、も気にするべき時もある。臨機応変にオサレは楽しみましょう。

それから、気に入ったテイストやスタイルが見つかったら、それにハマるよく行くお店を作ることもオサレの秘訣です。

僕はブランドにこだわりはありませんが、25年ずっと同じ1つ、2つのメーカーで生きて来ました。

結局そこが一番似合う、のと作りの確かさがよくわかっているからです。そこのものであれば目を閉じていてもコーディネートできるわと思えるほど、自分には簡単に着こなせますから、いろんな店に行く必要がないのです。

そうやって一つのメーカーと向き合うこともオサレの秘訣です。

でも、数ヶ月前から、ぱったりとそのブランドでの買い物がなくなりました。

ことの発端は受注会からです。新しいコレクションが出ると、まず顧客相手に「受注会」が行われます。2時間制で、数日間に及びますが、店頭に新作が並ぶ前に別の会場で開催されます。

一般販売で新作が店頭に並ぶ前、そこで顧客はもう注文を済ませるわけです。

僕はすごく忙しい人間なので、その受注会のタイミングで出張だったりはいつものこと。その時も忙しさのピークで「すいません、伺うことは難しい。最後の方の日程で」と言いましたが「どうしてもジェイさまには初日に来ていただきたい」と言われて(希少サイズが売り切れる前に、と言う理由)初日の早めの時間に来て欲しい、と言う担当者の依頼を受け、大好きな担当者さんだったのと、衣装が必要なので仕方ないと他の仕事の打ち合わせ時間を変更して、無理くり2時間作って会場に伺いました。

その受注会で、僕はジャケットをいくつか購入を決めて、いつものように入荷したら連絡をくれることになりました。そのメーカーは、洋服のサイズごとに作っているアトリエが違うため、全サイズ同時入荷はあまりないのです。小さなサイズから入荷する印象で、ものによってはそもそもの入荷数が日本に数点、と言う感じ。今回僕が注文したジャケットも、そのサイズは日本にたった1点のみの入荷のものでした。それを僕はその受注会で注文をしたのです。

1ヶ月ほど経って担当者から連絡が。「ジェイさま、以前ご注文いただきましたジャケットが入荷いたしました」と。「よかった」と返事すると「で、ジェイさま、大変申し上げにくいことなのですが、実は他のお客様がジェイさまがご注文されたそのジャケットをどうしても、どうしても欲しい、と言うことで」と言われました。

どうしても、どうしても欲しい、と言われたので、そんなに欲しいなら1点の入荷だし仕方ないな、譲って差し上げようと「あ、いいですよ。どうぞその方に回してあげてください」と気持ちよく伝えました。

「あー、よかったですー。ありがとうございます。ではそちらのお客様にお渡しさせていただきますね」と言われ、「はーい」と僕がいったすぐそのあとに、あろうことかその担当者が「でもジェイさま、その方は実はまだ買うかどうかは決めていらっしゃいません。ですので、試着されたあと、万が一その方にお買い上げ頂けない場合は、ジェイさまにお買い上げいただきます」と言ったのです。

そこで、もう僕は「これはあかんやつやな」と判断しました。

「いや、そんなジャケット、いらないです」と伝えました。「どうしても欲しいと言って、人がすでに注文したジャケットをよこせとおっしゃっているのですから、責任持ってお買い上げを。その人に売りつけてください。僕はいりません」

受注会はなんだったのだろう?そもそも受注会に2時間も割いて参加して、会社として受注した商品を約束どおり届けず、他の顧客に回す神経も神経だけど。だったら受注会の意味ないし、呼ぶなよ。そう思いました。

僕の注文したジャケットをなぜか他の人が横取りして散々試着したあと、やっぱりやめたとなったらジェイさんにお買い上げいただきますね、ってどうかしてる。なんでそんなジャケット僕が買わなきゃいけないの?買いませんから。

僕はそこで電話を切りましたが、ことの重大さに気がついたのか、15分後にまた電話がかかって来て「本社の方に相談しましたところ、ジェイさまがご注文されたジャケット、三日以内にジェイさまの元にお届けいたします」って。

「いりません。送らないでください。そんないわくつきのジャケット、いりませんから」

そう言って、電話を切り、銀座本店とのおつきあいを一切、辞めることになりました。本店だけでなくファインジュエリーの方も何もかもそのブランドとのおつきあい自体一旦怒りが収まるまでやめると宣言し、以降のコレクションの発売だろうが、先日の年に1度のジュエリーのイベントにも参加せず。何度か送られて来たお詫び状や案内状は、最後の方は開封もせずにゴミ箱へ。

バカにしてるわ。いい担当者さんだっただけに、残念すぎます。

でも不思議なのは、他の店舗の販売員さんたちは皆「絶対にあり得ません、どうしたことでしょう?」と言うのです。10年以上勤めて来て「そのようにお客様が注文されたものを他の顧客に回すと言うことを聞いたこともありませんし、会社としてそれはNGで、そもそも許されない行為だからです。」

もし僕の想像通り、他の怖い先輩販売員に「私の顧客に回しなさいよ」と言われて僕の担当者が回したとしたら、「今頃そのジェイさまのジャケットを奪った販売員は、えらいことになっていると思います」と。会社として、それはいかなる顧客であろうとNGだし、ましてや僕の注文品に手をつけること自体「絶対考えられないお話でございます」とのことで。

真相は、闇の中。2度と僕は本店に伺うことも、元担当者に会うこともないので、真相はわかりません。

「もしかしたら、入荷した際、必ずやることになっているのですが、担当者が検品の際に、ジャケットを傷つけてしまい、それでそんな嘘をついたのかもしれません」とおっしゃっていましたが、彼女はそんな嘘をつくタイプでもないし。ただただ残念です。それに1点の入荷でしたから、傷つけていたとしたら慌てて三日以内にお届けしますと連絡して来たこととも辻褄が合いません。

何れにしても、ブティックで、なんでも相談できる販売員がいると言うことはオサレにおいてもすごく重要なことです。もっと理想なのは、同じお店の同じ人から買う、と言うことです。僕は誰から買うのか、と言うことはものすごく気にする方です。あんたからは買いたくない、って人、いますから。もしお店の人が感じ悪いと、絶対買わないで出ます。どうせ買うなら、素敵な人から買いたいからです。

あっちこっちで色々買うよりも、自分が気に入ったテイストのお店から買う、と言うスタンスが僕はオススメです。そうすると、ずっと統一感ができるので「買い散らかして、服はあるのに着るものがない」なんて言うことも避けられます。

もとい、オサレの基本はやっぱり「研究すること」です。

お客様からも時々、同じようにオサレのご質問を頂いていますが、ただなんとなく流行りを着てみるとかでは全くオサレにはなりません。

これが流行ってるとかまずは、どうでもいいんです。流行りなんてオサレ上級者に任せておきましょう。

似合うか似合わないか。どうすれば似合うのか。自分の好きはなんなのか。

徹底的にまずは向き合ってみることはオススメです。

それはそうと、秋の銀座、やっぱり素敵でした。お茶して帰りました。

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