「ない!僕のあまおうがない!」
深々と冷える冬の朝のことだった。
ゆっくりとリビングのドアを開けたJ.ノリツグ パベル ホルスト 29歳。寝起きでも肌はぴかぴかである。
おもむろにJ’s kami高麗を飲み、黒にんにくゼリーを食べた後、いよいよ今日はJ’sショコラショーとあまおうのマリアージュを新しい形で試してみようと張り切って買っておいた今まで見たこともないような大粒のあまおうの入っている野菜室に手をかけ深呼吸。
輝かしい真っ赤なブリブリのあまおうとのご対面のはずだった。
「!!!」
戦慄が走ったとはまさにこのこと。
そこにあったのは、見るも無残にフィルムを引きちぎられ2粒だけ残ったあまおうの姿だった。
惨殺・・・・。
「いやああああああ!」
刑事さん、刑事さんに連絡しないと。気持ちが焦る。
携帯を持つ手が震える。どうして、どうしてこんなことに!!
一体誰が??
そうだ!うちの小さい怪獣、あのアシスタントはどこ?あの子は大粒のあまおうに目がない。
携帯を投げ捨てあの子の部屋に。ドアをちぎれんばかりに開けたJ.ノリツグ パベルホルスト 29歳。
いない・・・。
もぬけの殻だ。
そうだ、今日は朝から六本木のティファニーのイベントでせっせと働いているはずだ。
一体僕のあまおうはなぜあんな無残な姿にされたのか。誰に?どうして?
時間軸を戻そう。
昨日、帰り際タクシーを降りて、スーパーへ。特売のいちごをあえて無視し、最も高価な禁断のあまおうに手をかけたJ.ノリツグ パベル ホルスト 29歳。なぜか?今まで見たことないほどの大粒だったからだ。しかもその1パックだけ。
特売シールを貼られることのなかったそのいちごを胸を張って鼻息荒く会計し、家へ。
大事に野菜室へ。アシスタントに見つからないように、と奥の奥へと隠す周到さだったのに。
それなのに。
それが昨日の夜だった。
今目の前に広がる惨事に唖然とするしかないJ.ノリツグ パベル ホルスト 29歳。
この事件の闇は、相当深い・・・。
窓の外の灰色の低い雲が、冷たい風を飲み込みながら静かに、でもはっきりと無残なあまおうを見つめてた。
続く