「大変です!大変なんです!」
外は40度。うだるような暑さの中、叫びながらこの警察署に飛び込んで来たのはJ.ノリツグ パベル ホルスト 29歳。
今日も足が長い。
「ジェイさん、どうしました?」
「大変なんです。今日いつものように整体に行ったら、Kさんがいなくて!」
「え?Kさん?整体?」
「はい、整体の先生で、僕は最近、彼目当てで通っていたのですが、今日行ったら、もういなくて!」
「え?」
「QVCのナビさんが悪いんです!僕に早く教えてくれないから!」
「ナビさん?何を?」
「この前のオンエアの時、同じ整体に通っているQVCのナビさんが、あそこは3ヶ月ごとに従業員が入れ替わるから、気をつけて、って教えてくれたんです。3ヶ月で入れ替わる、なんて僕知らないから、20回分のチケットを買って、じわじわとKさんとの距離感を縮めていこうと思っていたんですが、それを聞いて、しまった!と思って早速予約して行って見たんです。とっとと連絡先交換しとかないと、って思って。そしたら、もういなかった!!いなかったんですKさん!」
なんと!それは事件!
つまりジェイさんが連絡先を交換する前に、Kさんが消えた、ということ。
・・・。これは何かある。
深い深い、何かが。
「わかりました、至急状況確認をしましょう。お店の名前と、彼の名前を教えてください」
「ナビさんがもう少し早く教えてくれていたらこんなことにならなかったのに!どうしてこんなことに」
外の暑さのせいなのか、汗ばみながら小刻みに怒りに震えるJ氏。
足が長い。
この時はまだ、日本中を震撼させた壮絶なあの事件に発展するとは、誰が予想できたであろうか。
夏の終わり。
全てはここから始まった。
整体師Kさん移動事件。
続く