いただいた花束は、日々、僕が世話をしています。

アトリエに持ち帰った際の水切りはうちのアシスタントの仕事ですが、それ以降は僕。アシスタントに任せると早く枯れるのです。
コツはやっぱりこまめな水換えでしょうか。最初の頃は延命剤を入れてますが、花の様子を見ながら普通の水に戻します。
あとはやっぱり、話しかけること。
汚い言葉をかけられると、人は萎縮します。どんどんおかしくなってしまいます。でも優しい言葉や、美しい言葉、楽しい言葉をかけられると、どんどん強くなります。動物も、植物も同じです。

僕は今、ずっと日本、東京にいます。
パリに戻ることはまだできないので、ずっと東京で仕事をしています。ちょっと疲れた顔をしてる、と指摘されますが、もちろん疲れています。

僕は本来なら、2011年を機にフランスに完全移住、という計画を立てていました。日本での仕事は、もうやりきった気持ちもあり、そろそろ世界で勝負したい、というのもありました。大きなきっかけになったのは、アルゼンチンで開かれた2011年の世界のスーパーシェフ21人のイベントに、日本からはもちろん、アジアから初のシェフとして僕は招かれたことが、現地での素晴らしいその経験が、僕は世界に出る、と決めた第一歩、でした。

日本にクライアントさんたちがいらっしゃったので、さすがにいきなりはい、じゃ、さよなら!というわけにもいかず、日本での仕事を整理するため、2、3年はかかるかもしれないと思いながら、でも日本のクライアントさんたちの嬉しい引き止めもあり、仕事の整理が全くつかず、結局完全に移住は諦め、2週間はフランス、2週間は日本、という2重生活をここ10年ずっと続けてきました。コロナが発生するまでは。
その間に、僕が本格的にQVCでの仕事を展開することに。たくさんのお客様や、QVC関係者、こちら側のチームのサポートを受けて、一気に前に押し出しました。
僕が世界でやろうとしたことを、QVCの仕事に集中させるかのごとく、カテゴリーも広げ、僕のプロデュース商品も増えてゆきました。
その中で、たくさんのお客様から嬉しいお言葉や、身にあまるほどのお言葉をいただけて、どんどん僕の考えも変わりました。
パリのアトリエで飾るバラは、とても美しいです。それはパリの何百年前に立てられた建物の歴史と空気感、その美意識が加わるため、格別に美しいです。パリに帰ると、一気に美意識が高まります。
でも、日本で飾るバラも、とても美しいです。花の華、はどこにいても、変わらない、ということですね。
僕は今、日本で頑張っていますが、どこにいても、自分の華を失わないように生きようとしています。
皆様から、たくさんの嬉しいお言葉をいただいた僕は、また格段に強くなりました。
また、この機会に、日本の魅力も再確認しています。
花の華、を摘もうとする人は、世の中に残念ながらいらっしゃいます。
でもこれまた(その人たちには)残念ながら、その人たちには摘み取ることさえできません。
いただいた花束の水を替えながら、僕は色々と今後のことを考えています。
花の華を、僕はどう取り込んで、どう魅せて行けるのだろうか。
パリに戻れるようになったら、僕はまたパリでいろんなことを学ぶでしょう。
また世界中を、駆けることができるようになったら、僕はきっと、もっともっと、強くなるでしょう。
そして僕は、もっともっと、人として美しくあろうとするでしょう。
どんな色を、咲かせてみようか。
僕はすごく、楽しみにしています。