お母様が先日、天国に行かれたとのこと。お母様が残した最期のメッセージに僕のことも教えてくれたね、とあったこと。お母様と揃って僕が大好きでしたと言うこと、僕は言葉を失いました。
まずは、心よりお悔やみ申しあげます。それ以上の言葉がもう出てこなくて。
そしてご質問にあった、僕がどうやって友達の死と向き合ったのか、どうして前を向けるようになったのか、と言うことですが。
僕が父を医療ミスで失ったり、パベルを20代のあの若さで失った時も、その死と向き合うことは本当に辛く、また許せない思いでいっぱいでした。まるで悲しみは底を知らないようでした。
どうやって向き合っていいのかもわからず、どうやったらその悲しみが薄れるのかと考えましたが、悲しみが薄れることはない、と言うのは、僕の経験上すでにわかっていたことでした。
だから、受け入れるしかない。そこから始めました。
父の場合は、元気だったのに、喉の調子がちょっとおかしいからと、医師の元へ。そのとき、医者の処方した薬が、通常、今は余程のことがない限り、処方してはならないもの(限りなく毒に近いためです。また本来最悪処方する際は、医師は患者以外の家族など他の人にその毒性を十分に伝える義務があります)だったのですが。気軽に渡されたその薬を飲んだ父の容態が急変しました。腎臓などの機能が全てやられて、腹水が溜まり入院。程なく帰らぬ人に。家族がその医師から謝罪を受けたと聞きました。不注意であんな薬を渡してしまい、本当に申し訳ないことをしてしまった、と。僕は怒りから訴えてやろうとすら、最初思ったんです。でも、僕の出身はど田舎。しかも、100パーセント僕が勝つことはわかっていたので、裁判で勝ったところでお金しか戻ってきません。父はもう戻らない。また、僕も子供の頃、そして家族がずっとお世話になっていた先生です。たくさんの命を救ってきた方です。訴えてはいけない、そうすぐに考え直しました。僕の悔しい気持ちを法的手段に訴えたところで、誰も喜ばず、悲しみが増えるだけです。父が喜ぶはずもありません。
パベルの場合は、ひたすら自分自身を責め続け、今もそれは続いています。この悲しみから僕が逃れることはなく、また逃れなくていいとすら思っています。ずっと、パベルのことを忘れないでいられるから。
プラハでパベルをなくした時、僕はプラハにいました。冬が始まる前の、冷たい空気と、あの光の加減。部屋の空気にまう埃の匂いまで僕の全身が覚えています。連絡を受けた時僕の心臓が潰れるような思いをして、全身の血が地面に吸い込まれたような感覚を覚えました。めまいがするほどの悲しみの中、悲劇のヒーローになってる場合ではなく、パベルのお母さんをロシアから呼ばないと、早く検視からパベルの体を返してもらわないと、故郷のロシアに送りかえしてあげないと、と必死でした。パベルの体を戻してもらうのは本当に大変でロシア大使館からチェコの警察に、チェコとロシアの友達たちから皆全力で掛け合ってくれました。そうこうしてるうちに僕はqvcのオンエアのため飛行機に乗らないといけなくなり、この時ばかりはショーのキャンセルを考えました。
でもパベルが、そんなことして僕が悲しんでいても喜びはしない。キャンセルはだめ。泣きながら飛行機に飛び乗った僕。
そうなんです。僕はまだ生きている。やることはやらないといけない。
もし、乗り越える方法があるとすれば、それは自分が生きていることを精一杯全うすることだと思います。
亡くなった人のことを嘆き悲しむよりも、亡くなった人と生前過ごした時間に感謝すること。その人と生前出会えたこと、また一緒に過ごせたことに感謝すること。
それに尽きるのかもしれません。
生きている人は、生きなければならないと思うのです。そして理想を言えば、誰か自分のことを必要としてくれる人がいる、と思えるような生き方を選びたいと思います。ただ生きてるだけじゃもったいない。
僕が地位や名声、お金や物にさほど執着がないのは、いずれ僕もこの世を去ることを知っているからです。
何も残りませんから、お金持って天国なんてないですし。人間、その体一つで去るんです。
だったらお金や物を残すより、人の記憶に残った方が嬉しくないですか?人との繋がりが残った方が、僕は嬉しい。
Sk様、どうぞ幸せを感じながら、精一杯生きてくださいね。僕も精一杯生き抜きます。お母様がきっと何より望まれていることだと思いますから。
僕は最近、仕事の合間に飲むお茶がおいしいとめちゃ幸せだったりします。たまたま入ったカフェで隣に若いイケメンが来るとテンション上がります。
幸せって、大げさなものじゃないんですね。僕も一周回って、やっとそれを知りました。
Sk様が、穏やかに過ごせますように。
写真は、F様から頂いた素敵すぎの花束。TSVの際、手違いで僕と一緒に出演ができなかったのですが、5日ぶりに僕の元に。美しく咲いています。F様いつもありがとうございます。
