帰りたい。
シャネルの秋冬コレクションの映像をみていたら、懐かしいパリの町並みを美しいコートを纏ったモデルたちが歩くところから始まりました。
ああ、、、、懐かしい。多分左岸の方。ここよく通ったなぁ。そうそう、この街並み。町並みというべきか。
2011年からパリに拠点を移した僕はほぼ1年の半分をパリで過ごしてきました。それがコロナになって、全くパリに戻ることができなくなり。
想像もしていなかった。こんなことになるなんて。
映像をみていたら、改めて「こんな美しい街だったな、たしかに」と。なんか泣きそうになる。
友達にも会いたいし。必死でパリで生活を始めた頃の記憶が戻ってくるし。
パリは地区によってはもちろん荒れた感じ、なところもあります(パリ郊外ほどではないですがそれでも)全て美しい街ではないのですが。僕が暮らしていたのは、ノートルダム寺院すぐ近くのパリの中心と言えるような、またセーヌ川すぐの場所だったので、とにかく美しく、いろんな角度から僕の美意識は叩き直された感じがあります。それらは全てJ.avec toiなどのパッケージデザインや商品開発の際にガンガン生かしていますが、パリ独特の、美意識、っていうのは10年も住んでなくても肌感覚で掴めるものです。
パリに帰りたい。
日本で見るもの、触れるもの、もちろん素晴らしいのですが、僕には絶対、パリです。
あの厳しさと冷たさの中に、飛び込んでこそなんぼ、僕はそう感じています。パリに住んで初めて正直、僕は生意気に聞こえるでしょうが、世界に通用する、という自信も確固たるものになりました。
もともと若い頃から、自信とうぬぼれは売るほどあります、と公言してきた男ですが。
パリで暮らして、僕自身にさらなる磨きがかかりました。
日本にいるとどうしてもアウトプットアウトプット、が多くなり、インプット、ができなくなるんです。
これはどうしようもないことですが。若手ではない僕。勢いだけで勝負ではなく、ある程度幅をもたせたり、また冷静に判断することも必要で、つまり、僕にはインプットが必要なんですね。
僕のインスピレーションの宝庫がパリでの暮らしなんです。
僕は他の業界人のようにパリで日本人社会(パリに日本人の方がたくさんいるんですよ)でセレブな暮らし、をしてるわけでは全くありません。一切、むしろあえてその日本人社会には属さないで10年、きました。せっかくパリに暮らすのに、日本人社会で日本語で生きられる中で快適に暮らすのはどうよ???と思ったからです。ご存知いろんなアナウンサーさんも歌手で女優の方も作家様も色々いらっしゃるパリですが、彼らのセレブな暮らしをパリの日本人社会の中で満喫する、というのもうらやましいね、とか、素敵だとはもちろん、思うのですが全然、僕の求めるものではないのです。パリで日本語で暮らすのも話すのも楽だろうけど、違うと思います。
また一匹オオカミと呼ばれそうだけど、僕はいつもそうです。
それをさらに鍛えてくれたのもパリです。
僕の息子はスゥエーデンにいますが、不思議ですね。僕は何をするのもパリがいいのです。
数々の芸術と、職人を産んできた町、パリ。
帰りたい。そしてそれらと向き合いたい。
そしてもっともっといい仕事がしたい。
パリの映像をみて震えるような思いをした僕でした。
皆様もよければ 2021/22年秋冬 プレタポルテ コレクション ショー — CHANEL Shows
YouTubeで検索して出だしをご覧ください。僕の暮らすところの美しい町並みの映像が見れます。
今年はもう絶対帰れないとわかってるけど。
来年は、帰れるようになるのかな・・・
歩いて食べて、また散歩してお茶をして。
コロナのコの字もなくて、普通にできた時代が、今となっては奇跡。

