今は眠ってる街、パリ。
人々の自由は制限され、我慢の日々が続いています。
冬は低い雲が広がるグレーの世界がパリ、ですが本来なら春の日差しが強くなり人々が光を求めて外に出て一層活気付く季節なのですが。
今のパリはもう、冬がそのまま止まったようでしょうか。
僕はパリには戻れず、これからも当分戻れないことはもう覚悟しています。だから東京のアトリエを引っ越し。東京での仕事に集中させるためです。
パリのアトリエに戻れるのかどうかもわかりませんが、その時はその時。
パリに住み始めて10年ほどになるのですが。10年経ってもまだまだ飽きないパリ。僕はロシア人の奥さんと別れ、フランス人の旦那ができてもう5年。彼はパリには住んでない、フランスのずっと南の地方に住んでいるのに。出会う時は出会うんですね。
僕の人生は、この10年で大きく変わりました。
パリが教えてくれたことはたくさんあって。まずはその厳しさ。パリに観光で来るぶんにはロマンチックですが、いざ住むとなると話は別。物価といい治安といい。ある意味かなり厳しい街です。よほどお金持ってるか、よほど若いか、じゃないと簡単に潰される街です。みんな生きてくのに必死ですから。治安は南アメリカとか比べたら全然いいのですが、それでも全く何があるかわからない。パリにいる際、胆を冷やす、瞬間が僕にも何度かありました。
ただ僕は日本に仕事でいる際、パリのアパートのオーナーから「部屋のドアが壊されて、泥棒が入ったわよ!」と連絡を受けた時も一言「鍵変えといて」で済ませた神経の男です。
これは大変!と慌てて連絡して見たら一言「じゃ、鍵変えといて」って・・。
未だにその呆れ果てたオーナーからは笑い話にされてますが。
あまり動じないタイプではあります。だからパリでいられるのかも。
ものが盗られても命が奪われたわけじゃないんです。だからやり直せる、と思った。
命ある限り、戦える。
僕は若い頃、お金を信頼していた人たちに持ち逃げされた経験があります。バリバリ民法のテレビや雑誌の連載を数本抱え、様々な雑誌に単発の企画でほぼ毎週出ていた頃です。売れてる料理研究家、と認識されていた僕の銀行口座にはお金は一瞬にしてわずかの端数以外残されていないような状況でした。噂が大好きな業界なので、スポンサーもあることだし、金銭トラブルはNGです。僕は警察に被害届も出さず(相手は僕の性格を知っていたので、被害届など出さないと踏んでいたはずですが)とにかく撮影は何かと立て替えなども多いので次の入金があるまで必死で抱えてる仕事を回すこと、光熱費や家賃の支払いをすることを最優先に踏ん張った経験があります。売れるものは全部売り、借りれるものは借り(お金ではないですが)とにかく乗り切りました。
クソみたいな連中と縁が切れてよかった、また若いうちに騙されておいてよかった、と自分に言い聞かせながら、踏ん張りました。
本当に今僕は、そのクソみたいな連中のおかげで、結果として、今、僕はとてもとても幸せです。本当にあの時騙されてよかった。結果として僕の人生が素晴らしい方向に導かれたのですから。
世界的にこのコロナ状況下で友達やアシスタント含め周りがどんどん仕事を失い、住むところを失っています。日本は特に経済的な保証がほぼない感じなので特に厳しいように思えます。
でもこの状況の中で、どうしても一つ、伝えたいのは。
生きてください。
ということ。
声をあげてください。一人で悩まず、とにかく声をあげてください。何があっても生きてください。
やばい家賃払えない、光熱費どうしよう、その気持ち、僕すごーくわかります。下積み時代や人に騙された時、散々自分が経験してるので。
今回のケースはもはや個人ではどうしようもないので、本来は政府が然るべき対応するべき、なのですが。見てる限り、その気はないようにも思えます。国民が納めた税金を戻す、というより多分それらのお金は国庫に入った途端「自分たちのお金」というような認識になっているのでしょうか。だから払いたくないと。本来は税金なので、別にその人たちのお金ではないのですが。自分たちのお金だと勘違いしてる感が。
ヨーロッパならもうストライキやデモに突入してトップは引きづり降ろされていることでしょう。国民を守れないトップはいらないと。
眠ってるパリ。
東京も眠ってる。
でも、眠ってるように見えてるけど僕には悲鳴しか聞こえません。
僕もコロナで職を失った元アシスタントやら友達やら困ってる人を精一杯援助します。どこに使われるかわからない募金よりも、僕は周りの人を一人でも助けることを心がけています。そして日本で意識して積極的にお金を使うようにしています。自分にできることをやります。
生きて欲しい。
この状況下でも経済は回せる人は回しましょう(お金を使える人は使うのです)苦しい人は声をあげましょう。お金をかき集めましょう。役所に相談を迷わないで。強く声をあげて。(向こうから来ることは絶対ないのですから)周りの人を助けられる人は助けましょう。協力しましょう。と、色々言われていますが、その通りです。やれることはみんなでやりましょう。お家にしっかりこもること、も大きな力です。
大好きなこの日本が、美しい国日本が、再び活気を帯びる日を目指して。
僕も精一杯、周りを応援できるように、とにかく頑張ります。
生きてください。