せっかくなので雑談 

自宅待機の中、せっかくなので雑談にしようかと。どうでもいいことだけど、業界の人以外、なかなか一般の方が知り得ない内容にしようかと。暴露とかじゃなくて、ポジティブなもので。

せっかくだから僕の暮らす街、女性の憧れのパリのブランド、についての話をしますね。

僕の東京のアトリエの一つ上の階に住むフランス人の女性は、エルメスにもう何十年と努めて来たベテランのかばん職人さん。彼女は普段、銀座エルメスで、修理をしています。フランスで長年職人として努め、バーキンやKelly bagなど女性の憧れのバッグを作り続けて来た人。その功績が認められ、日本のエルメスに素晴らしい待遇で赴任しているベテランなのですが。家賃などももちろん全額エルメスが。さすがです。

バーキンは熟練の職人でも作るのが大変で、一日数時間作業していると手が疲れてもう続けられないため、バーキンを置いて、あとの時間は財布とか小物を作る、そうです。バーキンも一人の職人が一つを最後まで仕上げるのですが、作業が大変で手が痛くなるため、一日数時間の作業しかできないためそんな簡単に作れるようなものじゃないそうで。何日もかかる。

僕がエルメスが素晴らしいなと思うのは、職人をすごく大切にしているところ。

彼女の話を聞いて感じたのは、彼女が日本に来る際の条件とか待遇も素晴らしく手厚い。職場環境も美しくさすがエルメスという感じ。まず職人ありき、の姿勢が細やかに感じられています。自分たちの利益追求が先で、従業員など別に、という感じで扱うパリの他のブランドとかとは全くスタンスが違う。エルメスは職人を大事にしている。

そういえば利益追及ブランドがエルメスを欲しがってエルメスを買収しようとして失敗していますが。そんなグループブランドにエルメスが買収されずに本当によかったと思います。

そうです、エルメスは名だたるメゾンブランドたちも認める、喉から手が出るほど欲しがる、まさに最高峰、という単独で立つブランドの一つなのです。

僕は特に、そんなにエルメスを買ってる訳ではないです。持ってたのは、バッグくらいでしょうか。僕はいつも買う店が決まっているので(パリの別の店です)あれこれいろんなブランドを買う、というタイプの人間ではありません。だからエルメスはほとんど持っていません。

持っていたそのエルメスのバッグも、修理に何度か出して、三回目には断られました。もう直せない、と戻されたのです。マンションの1階上のそのエルメス職人の彼女に聞いたら、あら、もう縫えるところがなくなっていたのよ、直しすぎて。あれはもう直せないわ、と言われました。

そうなんです。バーキンは一生もの、娘にも渡せるだとか、スタイリストさんたちは口を揃えたように言いますが、一生ものじゃありません。実際、数年使ってお直しできずに処分したのですから。彼女たちが一生モノというのは、ほとんど使わないから。

ただし、これはエルメスが悪いわけじゃなくて、僕の扱い方があまりに激しかったからだけです。パソコンだのなんだの突っ込むだけ突っ込んで雨の日だろうが平気で仕事でガンガン使っていたので、そりゃ痛みます。でも逆にいえばあれだけの使い倒しであれだけ耐えてくれたバッグ、ってやっぱりすごいんです。職人の技というか、あの丈夫さ、くたびれてもなお美しいというのはやっぱりブランドの美意識と職人の熱が十分に入ってるからでしょう。

だからエルメスお見事、という感じ。職人もあれだけ大事にして、美意識高く、単独でいる。他のブランドを買収してグループとして大きくなろう金儲けしてやろうというスタンスのブランドじゃないのが僕はとても好きです。

ちなみにスタイリストさんたちが言うように一生ものにするためにはクローゼットにしまいこんで置くこと、だそう。大事にしまいこんで、ほんといざここぞの時に数時間持つくらいでまたしまい込んでおけば持つそう、ってことのようです。

ただ僕としては単純にそれじゃバッグが偉いのか持ってる本人が偉いのかどちらか全然わからないんですけど、と言う話ですごく変に思えますが。

あくまでものはもの。使ってなんぼが僕の考えです。

エルメスとシャネルは、フランスで今回のコロナでも政府の援助を一切受けず、100パーセント、自分たちで従業員の保証、給与100パーセント出すと公言しています。

立派です。当たり前のことを、当たり前にきちっとやれるのは、今の時代実は珍しいのですから。

シャネルといえばフランスでは製造部門の責任者が友達のお母さんだったり、ニット部門のデザイナーが友達だったり、うちのアシスタントが働いていたりとしていますが、僕も大好きなブランドです。いつかシャネルの素晴らしさも少しお話しできればいいなと思います。

あ、そうだ。エルメスのバーキン、お店で買えない買えないとおっしゃっていると思いますが、コロナの影響で客足がグッと減った当初は、バーキンをお店で出してくれたようですね。さすがに売り上げが落ちるため、普段は「バーキンは在庫がありません」(実はある)と言ってたのが、そうも言ってられず来てくれる客には「今日バーキンありますよ」と勧めてくれたそう。でもそれが噂で広がってしまい、バーキン狙いの客がコロナ中なのに殺到したためまた一切出さなくなったとか聞きました。今は店舗も営業はしてないと思うのでどのみち無理だと思います。

どうしてもバーキン欲しい、と言う方は、年間600万円以上、アパレル(洋服のみ)のみ、で600万円以上購入してエルメスのVIP顧客リストにのるようにすれば買えるかも、だそうで。財布とか小物の革製品をせっせと買って店に通って店員さんとまずはお友達になる、と言うのがバーキン購入の裏技だとかネットでは言われるそうですが、実際は財布や他のバッグ、革小物の購入はエルメスではカウントされないそうで。またそんな通って店員さんに媚び売ってまで欲しいのかって気もしますが。それより純粋に洋服のみで年間600万円以上買う、ことがポイント。年間それだけエルメスで洋服買える人が果たしてどれだけいるのさ?僕は無理ですすいません、って感じですが。ただ、ポイントはバッグや革製品じゃなくて、どれだけエルメスの「洋服」を買ってる客なのか、なので、このご時世、600万に届かなくても洋服を頑張っていればそのうち「バーキンありますよ」と言われるのかもしれませんね。つまりバーキン狙いで来る客はそもそもエルメスの顧客ではない、と言う判断です。正しいと思います。余談ですが、エルメスのバッグは確かにエルメスの洋服にしかほぼ、合わない。グッチの服にエルメスバッグ、とか目も当てられないので。それならノーブランドの小ぎれいな清潔な洋服にエルメスとかの方がいい感じだと思います。またうちのアシスタントたちは若いし、別にブランドモノなど着てませんがみんなすごくオサレです。ブランド持てば着ればオサレっていうのは絶対にないです。

ちなみに僕がバーキンを買ったのはもう20年くらい前の話。当時は転売や投資目的で買う客はまだいなかった時代です。その当時の定価と比べたら今は倍以上くらい値段が変わってるみたいですね。今の値段出すなら僕はもういらないかな、と言う感じ。年齢とともに、重いバッグはもう持てないですし。カードケースと携帯、鍵しか入らないようなちっちゃなバッグで日々嬉々として生きてる僕にはもうバーキンは20年前の僕で終了です。

ね、なんかとりとめもない雑談でしたが、コロナ中のたわいもない話として、なかなか見えないブランドの小ネタ話を少しだけ楽しんでもらえたらと思います。

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