大人になったミザエル

 

僕たちはあまり喧嘩しなくなり。

怒るのはいつも僕だけに。

僕は未だ火のように怒るので、彼はじっとその火が収まるのを待ってる感じ。

結婚した当時は、お互いが火。彼もまだ19歳だったわけだし。火が火を煽るからもう止まらない。あれでよく結婚したもんだと思うけど。なんやかんやと4年が過ぎて。

成長したのは彼だけということか。

それでも普段は本当にまだまだ子供。でもいざとなると、男の匂いが香り立つ。

日本での二人の時間が終わったら、一度フランスに帰るけど、すぐまた冒険旅行に行くそうで。ヒッチハイクしながら、バッグパック一つで世界を回りたいらしい。お金は道中でブレスレットを作って売るからなんとかなるって。一日100円も稼げたら、それで生きていけると。

1年間のあの治安の悪い南米の冒険旅行で、彼はお金がなくても全然生きて行けるということを学んだらしく。3日間飴玉3粒以外何も食べなくても大丈夫、消防署の軒先の地べたの上で眠れるし大丈夫ということも。

価値観も生活スタイルも全く違う僕たちがうまく行くのはきっと、想像以上に彼は僕のことを理解してるということか。

「僕はジェイのことを全部理解したつもりでいたけど、会うたびに別の発見がある。君は驚きの玉手箱」

数日前に彼が僕に言ったけど。

僕のこと全部理解はできないだろうけど、おそらく誰よりも理解してるんだと思う。

相手の怒りがおさまるまで待つ。

言うのは簡単だけど、これってなかなかできない。

特に相手との距離が近いと難しい。

22歳にしてそれがもうできるミザエル。

想像以上に、彼は大人の男だと言うことで。今後彼が、世界のどこに行こうとももう驚かない。怖がらない。

乾いた熱風が吹き抜けるアフリカの大地を眺めても、夕焼けの美しい大地と森が切り立った絶壁に全力で手を伸ばしているような場所で座っていても。汗ばんだ彼の匂いがその静かに広がる森に吸い込まれ冷たい夜を誘っても。

彼はもう大人の男になったんだから大丈夫。

生きたいように生きればいい。

僕もそうしてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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