さあ僕の大好きなコートの話ですよー。ここで何度もしたけど。もう一回コートの話をというリクエストにお答えしてもう一度。しつこいけど書きます。コート大好き。
コートは、生地です。そしてコートは自分自身です。
あれだけの面積を占めるわけですから、安っぽい生地のコートを着ると途端に安っぽい人に見えます。だからある程度、自分なりにコートにはちょっと無理してみました、くらいの予算をかけて損はないと思います。10年とか平気で着れるので元はとれますし、どこでも自信を持って振る舞えることはお金では測れないのに、嬉しいことにお金で買えます。はい、安っぽい生地の代表選手は、前も言いましたが、ダウンコートですね。一瞬で「近所のスーパーに行くのね」というのが演出できます。
だから大人はダウンをお出かけに着てはとても残念なことになってるというのは以前書きました。通販番組で「このダウンならドレスアップした時も着れますよねー」などと言ってますが、正確には「このダウンならドレスアップした時も(着れるけどとても残念なことになるからやめたほうがいいけどあなたならそれに気づかないでしょうから)着れますよねー」と言ってるのかも。とても失礼なコメントに聞こえたりして。「このダウンなら(生活感溢れるあなたなら)ドレスアップした時も着れますよねー(私は着ないけど)」と言ってるのかもしれません。ほんと気をつけてください。
前のブログを読んでくれた方から「スーパーの卵のタイムセールが始まって群がってる人がみんな揃いも揃ってダウンだったのを見て、ジェイさんが言ってたのはこれか、とハッとしてそれからダウンはちょっとしたお出かけでも絶対着ないようにしてます」とコメントをいただきました。そうです、そうです。近所のスーパーや通勤には全く問題ないと思うのですが、お出かけには考えたほうがいいと思います。
それから、コートは丁寧に扱うこと。もったいないから汚れるのを気にして着られない、というのも問題ですが、雑に扱えるコートを着てると、あなた様自身が雑に扱われます。人は高価なものやいいものは丁寧に扱う、という習性があるようで。特にヨーロッパではあからさまです。雑に扱えるようなコートを着てると、人はあなた様を丁寧に扱うことはないのです。たとえ安く買ったコートでも、お気に入りであれば丁寧に扱うはずです。値段じゃない。別に高いブランドコートとかじゃなくて、ちゃんとスチーマーをかけてシワを伸ばしてあったり、手入れができてるかどうかというところです。そうゆう空気感が、人には伝わります。
僕はヨーロッパと行き来してるため飛行機に乗ることが多いのですが(エコノミーですけど)コートをぐちゃぐちゃにして荷物棚に無理くり突っ込んでる人たちをよく見かけます。それか適当に丸めて、置かれたスーツケースのコロコロの部分(地面を転がる部分)にもろコートが触れながら押し込んでるとか。僕は大きなビニール袋を持って行っててそれにコートを畳んで入れて、荷物棚の場所を取らぬよう自分のバッグの上に乗せてます。たとえ隣の人がスーツケースの足を向けて突っ込んできてもコートにその部分は触れません。空港ではトイレもスーツケース転がして皆入っていくので、スーツケースの足はいろんな菌が付いてるそうですし気持ちのいいものではありませんから。もちろん、ファーストクラスでなくてもコートを預かってハンガーにかけて保管はしてくれますが、その扱いは相当雑です。ぎゅっと押し込まれて大変なことになってることも。だから僕は預けません、降りるときもめんどくさいし。
とにかく、僕はコート愛が強いのです。暖かいし、オサレだし、かっこいいし素敵だし。着るアートだと思います。またいいコートは、僕が必要なくなった時に必ず欲しい人がいますから、それこそ擦り切れるまで長く長く着られるでしょう。環境にも優しい。スタイリストさんたちは「服に一生ものはない、せいぜい5年」とか言いますけど、それは疑問。僕はどの服も10年以上平気で着てますし、全く問題なくいつも「おしゃれねー」と言われます。いい生地であれば、時代に合わせてお直ししたりもできるのです。僕の場合は、ほぼせずに10年以上着られてます。そのスタイリストさんたちはきっとバブルの時代を生きた人たちです。肩が張ったパワーショルダーのコートとかあったそうですからね。そら着れんやろ、です。ただバブルを知らない僕は、社会に出た時からデザインも「普通」に戻ってたようで、全然問題なく10年は着れてます。この生地とコートを作るのに、職人さんたちがどれだけ時間と労力をかけたのかなぁ、とか考えると、ドキドキします。
逆に、その「安い」値段にするためにあれこれと手を抜き、安い生地を使い、縫製も荒いコートを見ると腹が立ちますし、そんなの半分は返品されるだろう、売れ残って破棄になると環境にもよくないし、返品される分を見越してその値段つけてるだろう、ってことはその価格でもボッタクリやん、腹たつわ、と違う意味でドキドキします。それに、そのような商品を売るのは、どうせあなたにはこの程度のものでいいんでしょ?ほら買いなさいな、というその企業の姿勢もその裏に読めるので、僕は「バカにしてる」とすごく腹がたつのです。もちろん、一生懸命安くてもいいものをという姿勢の企業もたくさんありますね。ただ残念なことにそうじゃないのもたまにあったりします。商品が実際届いた時に、がっかりするようなところが「それ」です。
いいものを一生懸命作ってる職人さんたちを支えるのも、潰してしまうのも我々消費者の責任でもあるのかもしれません。食品でもなんでもそうなのですが、いいものには、生産するに手間も時間もお金もかかります。全部機械化、賃金の安い生産国で大量生産、作りすぎた結果ものすごい量が毎年焼却処分されたりというのはそろそろ考える時が来てるのかと思います。コート一つ見ていても、そんなことを考えさせられるのです。
衣食住。身の回りのものは丁寧に扱いたいですね。手入れしながら大事にしましょう。大事にしないようなものはもういらないのです。断捨離とか言う前に、最初から買わない。自分にとて本当にいいものしか、もういらないと思います。