シンプル、を間違えない

February 19th, 2017

びっくりしました。久しぶりの本屋さん。

断捨離?とかミニマリストとか、シンプルに暮らす、とかの類の本がコーナーになって、入り口に。

シンプルな暮らし、とかがすごく流行っているのはなんとなくわかっていたけれど。僕の場合、ブログを読んで下さってきた皆さんはご存知なように、生まれた時からシンプルに暮らしているため、いまさら、と思ったのですが、大間違い。

僕の考えるシンプルと、本で書かれているシンプルは(立ち読みで申し訳ないけれど)全く違うものでした。

本で取り上げられているシンプルな暮らし、というのは、僕の目には質素、と映りました。もっと正確にいえば、貧弱。

シンプルって、そんなビンボくさいシンプルじゃないし、はたまた無印良品のカタログの世界観とかでは決してないはず。でもその類の本を見ているとそのどちらかという感じ。

ああ、僕がシンプル、と解釈していたシンプルな暮らし、じゃなくて、仕掛けられた新しい概念のシンプル、なわけだ、と思いました。日本だけで通用するような、シンプル。

いいとか悪いとかじゃなくて、違う。

シンプルな暮らしとは、本来自分が心地よく、豊かに暮らすためのもの。決して捨てることが目的ではないし、物を捨ててものがなくなった快感に酔うわけでもない。

僕はこれから、シンプルに暮らしたいとは言わず、豊かに暮らしたい、と言うことにします。

僕のアトリエは日本もヨーロッパも、ものがない、と言っても、必要なものはきちんとあります。

また、物は少ないけれど、必要なものは、通常の比ではないくらい大きくて、しっかりとしたものだったりするので、とてもじゃないけれど、シンプルな暮らしのイメージ写真や無印のカタログで見えるような現代の日本的なシンプルではありません。

僕はあくまで、豊かに暮らしたいのです。

僕にとっての豊かの象徴であるシンプルは、今の日本のシンプルとは違うけれど。

もしも今、その手の本を買って、断捨離やシンプルにはまって、物をどんどん捨てていたりする方がいらしたら、ぜひ一度、考えて欲しいと思います。もしかして捨てることに快感を覚えてはいませんか?次は何を捨てよう、何て部屋を見ていたりして。

捨てることが本来の目的ではありません。

僕が見たその類の本の世界観はシンプルというより貧弱。若い子にはいいでしょう。でもある程度年齢を重ねてあの世界だと、さすがに心配になります。大丈夫?と。だって、明らかに貧弱です。寂しい、というか。シンプルと寂しいは紙一重ですから。

フランスの友達は、仕事を始めて、お金はまだないけれど、1年間一生懸命貯金をして、絵を買いました。僕はとても素敵だと思います。

日本の今のシンプルな解釈の本だと、壁は白、部屋を広く見せるためにいちいち飾らない、暮らしに必要な最低限のものだけ、とか言っていたりします。

そもそも、絵や花が、必要なものに入ってこないその感覚が僕には理解できませんが。

お金があってもなくても、豊かに暮らす。それは決して流行りのシンプルに暮らす、類の本の提案の世界ではありません。

僕の東京のアトリエは、リビングに壁を大きく隠してしまう巨大な絵が2枚、あります。とても大きくて、迫力があります。それらの横に大きな鏡と、小さな鏡が2枚、合計三枚、この小さなリビングルームにあるのです。僕は今のアトリエに引っ越す際、壁紙や床の色が気に入らず、オーナー会社に張り替えてもいいか?と掛け合いましたが却下されたので、よし、この昭和な香りのする空間を僕らしく整えるしかない、と腹をくくりました。テーマはヨーロッパのおじいちゃんの家、でした。だから全て、ヨーロッパから日本に持ってきたものです。

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多分シンプルな暮らしを提案されている方々から見たら、この小さな空間にてんこ盛り、ありえない、と思われるでしょうが。日本は何もない空間に美を感じ、西洋は飾り立てた空間に美を感じることは十分承知しておりますが、何もない空間が必ずしも美を宿すことはありません。

フランス人の友達の話に戻りますが、彼は会社に勤め日本で暮らし、まだ20代ですが年収は普通の社会人の3倍はあると思います。

けれど、彼は日本の洗濯機があまりに高い、というのと、ヨーロッパのようにドラム式で温水で洗うものが欲しかったため、探して探して、韓国製の中古の2万円しないものを見つけました。その洗濯機を買ったから、キッチンの棚やテーブルが買えないから、とその洗濯機の上に板をのせ、棚を作ってそこに入れる引き出しなども板を買って作り、数ヶ月かけて完成させました。そんな彼が、1年かけて一生懸命貯金をして、その絵を買ったのです。かなりの給料をもらっている彼が必死で1年かけたほどの金額の絵です。しかも巨大、で、場所をとります。でもその絵を所有することで、それを眺め、それが視界に入ることで自分の生活が豊かに感じる、と言いました。

そんなのシンプルライフじゃない、そんな大きな絵なんかいらない。そのお金で高級時計を買って、あとは貯金すればいい、という方もいらっしゃるでしょう。もしかしたら、今ご自身の部屋にあるソファーを捨てようかな、これがなかったらスッキリと見えるし、でも捨てるのもお金がかかるかな、とか考えているのかもしれません。無印良品のカタログで見るような、木と優しい陽の光と、ステンレスの輝きと、白に包まれた世界を夢見て、またはイメージしながら。

でもね、本当にいいソファーは、この上ないくつろぎと、安らぎの時間を与えてくれます。そこに友達が座って、一緒に話し込むことだってある。人生に大きな意味と、厚みを与えてくれるものです。捨てようかな?なんて考えるのはそもそも、その程度のテキトーに選んでしまった中途半端なソファーだから、なのかもしれません。

捨てる、捨てる、と、その類の本に踊る文字に、僕はうんざりして、もう見るのも嫌だと思いその本屋さんのコーナーを立ち去りました。

捨てることは嫌いです。僕は捨てるのが嫌だから、そもそも買わないし。また、買ったものは捨てるのが嫌なので、自分がいらなくなったり、この世からいなくなったら誰か喜んでもらってくれるようなものだけ、にしています。本物、は古くなっても味が出ます。イケアの家具など買ってしまったら、古くなったらもうダメになるだけ。何度か引越しをしたら、分解するたび穴が広がり、いずれ組み立てることもできなくなるのでしょう。10代20代初めの人には、全く問題ないのですが。ある程度年齢を重ねたら、ぜひ気がついて欲しいな、と思います。職人さんが心を込めて作りこんだ家具は、100年軽く持つでしょう。そんなのお金持ちしか買えない、何て思わないで。今時中古で買える値段で、いくらでも探せます。時間がかかるだけ。でも諦めない。むしろ見つかるまで貯金しておいて、見つかったら迷わず思い切って買って欲しいと思います。

美しい絵を飾る。そんな姿勢が、人生を一層豊かにしてゆくことは間違いないです。それは信じて欲しい。絵が無理でも、切り花を飾ることはできるはず。そんな花なんて別に食べれるわけじゃあるまいし、誰も見ないし、という方の人生と、一人暮らしでも花を買い、それを部屋に飾り、日々水を変えてあげる、という人の人生が、同じように進むとは絶対思えないのですから。

流行りのシンプルではなく、豊かに暮らすこと、オススメです。